幻灯/狸亭
す波
うねりが少年の目を襲いはじめる。
少年は映る少女の営み
すべてを見ている少女をだきしめる。
いや何よりも少女の姿を見る。
少女を見ている自らのかなし気
な顔を見ていると彩られ目にしみる
再現された過去はいまも悩まし気。
まぼろしの消え去った白布に映る過去。
それぞれの幻灯を持っている二人よ
そこに今映しだされている彼処(あそこ)
消えていたねんねんころりよおころりよ。
この地上でたった二人の愛しあう
者たちのはかない一つの過去が映り
一つの過去が消え一つの未来が行き合う。
新しく生まれでる幻灯のお祭り。
隔離されたほのあかい闇に瓜二つ。
兄妹のようにも見え恋人のようで
二人仲良くもぐりこんでる春炬燵。
たよりない二人の狂言はまさに空腕(そらうで)。
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