( 六甲山から夜景を・・・ ) /服部 剛
 
ニール袋を 
愛しいひとのように
抱いていた
強く抱けば 
猫になり 
するりと逃げてしまうので 
僕は少し、力を抜いた。 
僕とビニール袋の
すき間に 
猫の顔をした愛しいひとの幻が 
頭を潜りこませる 
一瞬の 
夢を見ていた 
六甲山の山間から見下ろす  
神戸の夜に
幾千もの地上の星が灯り始める  
硝子張りの天井には 
下弦の月が 
夜空に 
細い爪痕を残す 
消えること無い金星(ヴィーナス)は 
いつまでも
力強く、光る。 
ケーブルカーはがたがたと 
夜も更けた六甲山から 
地上の星が煌く神戸の街へ 
揺るぎ無い、孤独な愛の碇を下ろすように 
暗闇のトンネルを何処までも 
がたがた下ってゆきました 
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