ほしくずたち/山中 烏流
 
ましい
 
大切であったものは
中心を、少し外れた先で
爪を立てている
 
手のひらに書いた扉に
逃避を目論見ながら
 
 名前は、何だったろうか
 
 
・なきごと
 
なだらかな頬
人間という人間のことを、私は知らない
 
濡れた指先が
寝癖じみた頭に触れたとき
喉の奥が、そう震えて
 
 春だ、と思う
 
 
・はだいろ
 
初めなど、知りたくはない
 
ひとの柔らかな場所と
触れる、という仕草だけで
平和なのだから
 
本当なら、知りたくはない
 
 迷ってしまうから、
 
 
・まよいご
 
迷子のふりで彷徨う
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