海に沈んだ漁師たち/ろくましん
海に沈んだ漁師たち
対流のエスカレータに乗って
しばらくぶりに海面に出るとしたら
嬉しくなって波の間に間に手を振る気持ち
ぼくには分かります
海の深さと宇宙の深さは
比べものにならないけど
ぼくが海に沈んでいく姿は
銀河の彼方に流されていく
宇宙飛行士のそれに近い
たどり着いた海の底は
目くらのくせに電光ネオンの
気味の悪い深海生物たち
ぼくを盛大に出迎えて
「ちょっと君、その変な触覚でぼくに触らないでくれないか」
ところで、面白い話をしましょうか?
冬の海に落ちた漁師を助けるには
長い柄のついた刃物で体を引っ掛けるそうだ
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