ことばのさんすう・1・1/れつら
僕は元来多くの詩を覚えているほうではないが、「ひとつ」ということを考えるうえで、忘れられない詩がいくつかある。今回の論考ではこうした例を取りながら考えることも必要となるだろう。
りんご 山村暮鳥
両手をどんなに
大きく大きく
ひろげても
かかへきれないこの気持
林檎が一つ
日あたりにころがつてゐる
事物、に着目するならば、この短い詩のなかに明示されているのはたったふたつ「気持」と「林檎」である(無論「気持」を事物であると断言できるかと言われると、若干の留保がありはするのだが)。前段で論じたように、詩は1を孕むということを考慮に入れるなら
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