桜の花びらを/小原あき
桜の花びらが落ちているのが綺麗で、拾い上げようとしたら、それは蝉の亡骸だった。
かさかさと乾いた音がして、命がない、ということは、水分が無くなってしまうことなんだな、と思った。
蝉の亡骸を犬にやると、しゃくしゃく、と食べた。
美味いか? と聞くと、さして、と答えた。
家に帰るために歩きだしたら、しゃくしゃく、と足元が鳴った。
蝉の亡骸でもあるのか、と思ったら、一面雪だった。
水分だらけの雪には、命があるのだろうかと、手のひらに雪を一粒落としてみたら、桜の花びらが最後の香りを放っていた。
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