三十九歳/小川 葉
スウィートミュージックを
鼻でなぞってみても
伝わってこない体温の
そのほんとうのやさしさだけが
僕は欲しいのだけれども
もうそんなことばかり
言ってばかりはいられない
と思うのだけれども
時々熱くなる
僕は来年
四十歳になったなら
ずっと三十九歳でいたいだなんて
思いたくもない
そこからきっと
僕の人間というものが
はじまるのだと信じてみたい
と心に決めはじめたというのに
今はまだ
三十九歳なのだと
胸を撫で下ろす自分を
懐かしんでるような
そんな気持ちになっている
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