三十九歳/小川 葉
二十歳になった時
ずっと十九歳でいようと思った
三十歳になった時も
ずっと二十九歳でいようと思った
来年わたしは
四十歳になるのだけれども
三十九歳は
なかなか簡単には終わってくれない
長いのだ
やけに長い
なぜだろうと考えてみたら
僕には四十歳以降
生きてゆくための指標が
欠落していることに
今さらのように気づいてしまったのだ
仕事帰り
丸善で太宰のグッドバイを買った
買うのが怖かった
僕も三十九歳で
死んでしまうのではないかと
ずっと恐れていた
その本を買った
三十七から
没年の三十九歳になるまでの作品を
涙を流しながら読ん
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