待ちびと/服部 剛
 
額縁に収まるその絵は  
四角い顔のあぱーとの  
二つの小窓が黒目のように  
展示のガラスの前に立つ  
私をじっと見つめます   
隙間無く  
犇(ひし)めき合って  
立ち並ぶ  
三階建てのあぱーと群  
嘗(かつ)て  
在りし日の詩人が愛した  
ひとりの少女が住んでいました  
危うげに傾く長い硝子の扉が  
ぎぃぎぃと風に軋む  
三階の窓から  
ちょいと  
白い首を出し  
夢のような空を仰ぐ  
ひとりの少女がおりました  
羊のような面影の  
詩人といえば  
一階の玄関脇の  
赤いぽすとに溶
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