きょうの天国/あすくれかおす
 



「昼休み」



昼間は雲間に光がさした
カッターナイフの芯のかたちで
だんだん空が開けてくると
都庁周辺の緑地では
予報士たちが嬉しそうに
フユバレ!テンキ!と羽ばたいている



「退社」


タイムカードを押して
必要なぶんの暗がりを身にまとうと
いつものひとりの帰路になる
これが人手不足の
照明係のいないわが劇団で
次の公演は
あなたも一緒にどうかしら

下心じゃないのよ 
これはおばさんの熱意なの
こっそりひとり/芝居して
キャロットタワーの足元をゆく
右手に持ったピルクルの
冬の肌色がやたらに寒い

(どっかに
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