缶詰/かいぶつ
 
てくる人々が
吶々と挨拶をしてきて
内気な角度で言葉を返す僕は
赤い魚がでてくる大好きな絵本に
落書きをされた気分になった

風邪をひいた日は
おもいっきり母親に甘えた
母はそんな僕をプラネタリウムに
連れて行ってくれた
ふたりで観た星空は
少しむずかしくて ウソっぽかった 
宇宙に興味のない親子は
ありきたりな感想だけを置いて
みかんの缶詰を買って帰った

自転車のうしろで
母の背中につかまりながら
からからと咳をした
かごの中でみかんの缶詰が
おもちゃみたいに
音を鳴らしながら
とびはねていた
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