恋歌/エチカ
 
網目のような夜の波間のノクターン
オールをこいだ波の上で
ぱしゃり、とはじけた憂鬱を
必死で波間に溶かして
トビウオ達の群れが
空を渡っていく光を見ている

街の光は黙ったままで空を飛び交い
海では空っぽのくらげが抱き合って
骨を捜しあっている冬の夜

記憶の中で確かなことを
たぐりよせてはちぎり捨て
拾い集めては失った
まばらな僕らの世界地図

着古したよれよれのせえたみたいに
向こうの世界が見えていた

よじれた糸を手繰り寄せ
網の目のようなことばを
殴りつけては繰り返し
仕合せを探した冬の朝
しゅんしゅんと鳴く蒸気の音が
窓ガラスに苛立ちと優し
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