滅びの匂いに/いねむり猫
 
滅びの匂いに 振り向く

あの人が漂わせていた 懐かしい腐敗の香り

滅びの一つ手前で彷徨う旅

熱病の中で自分の体温に 酔う
口の中に溢れた血の味
己を苛め抜くアスリートの興奮

滅びの匂いのする人に惹かれてしまう

強い生の中に閃く死に 惹かれるように

花を愛しながら 
花びらを敷き詰め 踏みにじる

小さな命をめでながら 
小さな命をむさぼる

愛と無慈悲の間に 距離はなく
悲しみの中に 未来の歓喜が内包されていることを 
あなたは すでに気づいている

滅びは生のただ中
生の中心は 死への甘いキッス

刹那に生きて 刹那に訪れる死を受け入れる
生物のさだめを ただ思い出すだけていい

滅びの匂いのするあなたに 惹かれる

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