My Favorite Things/れつら
りゃそうだけどもさ、あのころは、わたしとても好きだったのよ。甘い味が舌先に広がってタンギング、弾けるリード、振動、気温の変化。トーンホールのゆるい曲線をなぞって奔流がだらしなくあけた朝顔から吹きこぼれる。ちっちゃくって、まあるくって、
三角形は面だ。滞りなく寝そべればそこから動くこともないのに。削れた頂点はなんとかその折り目を保とうと拡散し、摩擦する面を広げていく。絡まった指先は解けついて、けれどもその上の、朝顔の上の滴。震える髭先。銅製の管体、暖かいウールの絨毯。スタジオの毛羽立ちは上空へ、仰ぎ見れば天井はなくて空、夜を飛ぶ雁は月を欠いてその輪郭が見えない。わたしが思い出すお気に入りのあ
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