My Favorite Things/れつら
クァルテットも今日はテナーサックスが休みで、席のひとつ空いたスタジオでは三本の糸がしなりながら折り重なり、それでもこの編曲が傑出したものだと思わせるのは、欠けた旋律の在り処がそこここに顔を出し、鳴っていない音を思わせるからだ。白く、浮かび上がる点はかつての四角形の頂点、けれどそこから一点を除けば三角形になるというのは、いかにも早計だ、四角形にはならない。欠けた三角形はその手を宙に伸ばし、やり場のなくなった指先をふらふらさせている。かつて内側だった面が剥き出しになり、外側だった面はそのぶん所在なさげに、スタジオの残響のなかで折り合いを欠いている。なにぶん足りてないわけだからね、と頭では納得させ
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