地球の丸さの前に立ったとき/小原あき
っかり治まってしまって
雨上がりの匂いがした
美しさの前に立ったとき
どうしようもなく
頬が赤くなる
熱っぽくなる
寒気がする
風邪をひいて
寝込んでしまう
寂しさの前に立ったとき
どうしようもなく
しゃがみこんでしまう
ひざを抱え込むと
空みたいな体育館の
天井が見える
きっとあそこに
吸い込まれるのかもしれない
やましさの前に立ったとき
どうしようもなく
食べたくなる
とりあえず目の前にあった
あんぱんを食べたら
ますます食べたくなった
そのうち
世界中を食べつくすかもしれない
地球の丸さの前に立ったとき
どうしようもなく
その線を辿りたくなる
うまく丸が描けないわたしは
その線の先を
どうしても知りたくなってしまう
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