「ピエロ」/広川 孝治
 
誰にも見てもらえない

哀れなピエロ



疲れた表情を見せるのは

あの人から優しい言葉をかけてもらいたいから



ため息をつくのは

あの人に振り向いてもらいたいから



包帯を巻いているのは

あの人の目を引きたいから



涙が流れているのは

あの人に抱きしめてもらいたいから



本当の自分は傷ついてなんかない

本当の自分は苦しんでいない

本当の自分は疲れてない



全ては

あの人に

見つめられたいから



そう思い込んでいる心が

傷だらけになっていることに

気付かないまま



偽りの自分を

本当の自分と思い込んで



落ち込んでみたり自己嫌悪に陥ってみたりする




誰にも見てもらえない

哀れなピエロ

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