「冬の到来」/広川 孝治
空から舞い落ちるひとひらの雪が
待ちかまえる僕の手のひらに
舞い降りて消えてゆく
見上げる空には低い雲が
どっしりと青空を遮って
見渡す限り灰色で覆い尽くしている
突風が北から僕を揺らす
耳を引きちぎるかのように
凶暴に吹き付ける
冷気の毛布にくるまれた冬の街
寒さをごまかすように
クリスマスのイルミネーションが街を飾る
その下を
寒そうにコートの衿を立てながら
足早に過ぎてゆく
人、人、人・・
この人ごみの中で
僕がどれほど必死で生きようとも
その証しは
手のひらに消えていったひとひらの雪のように
この街の手のひらで
淡く消えゆくのだろう
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