黒々としたものが/オイタル
りであるのか いや
白い台座と本と花瓶は祈りであるのか いや
ではロウバイと風とお前と懐かしい朝食は いや
編み針を持って小指を掛け、親指と中指で編地と一緒につまむ。小指は曲げて。手のひらで押さえるように。それを崩す。
最初に左針の編目と編目の真ん中に針を置く。それを崩す。いや
右針を下げながら右に崩し、通そうとする目を右針の腹で少し崩す。それを崩す。いや
それを崩す いや
これこそは祈りであるのか いや
編むことは祈りであるのか いや
針の腹は祈りではないのか いや
遠のくお前の時計の音は いや
では聞きたい
祈りはどこにあるのか
それは黒々と焼くものの中に
それはぼくらの五十の鐘の中に
それはその針の腹の上の春に
それは祈ることの中に
今朝
冬の鳥が窓をすり抜けてすばやく
家中に億万の雪を降らせた
お前もぼくも
もうそれを崩してはいけない
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