月光ドライブ/フミタケ
古い古いソウルミュージックが
ラジオから流れはじめたその夜の
23時
僕は窓をあけ、風を誘い込んで
ノロノロと車を走らせる
マービン・ゲイ そしてマイケル・ジャクソンを口ずさみながら
誰かと声を交わすあてもないままに
行く先もないままに
月明かりの下
「今すぐ君に会えたなら」
国道の灯の列は
この音楽にあざといほど似合っていて
表層に薄く飾り立て
錯覚を手招く
鎖骨からこめかみにかけての
冷たい線
慰めもなく
優しさもなく
そっと過ぎていく
月明かりのドライブは
青梅街道
ネオンサイン
北西の風 環状星雲
夜のエレヴェーター
たゆたっている
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