ただしい船/小川 葉
ただしい船が
たくさん
海に浮かんでいる
沈まずに
まっすぐに
まちがいのないところへ
向かって進みながら
ただしさだけを保っている
嵐にでも遭ったのか
うちあげられた船がひとつ
岸辺からただしい船を
見ている
自分でまちがえたわけじゃない
どこにでもいる
普通の僕らみたいな船なのに
ただしさとは
いったい何ですかと
僕は海に向かって叫んでいた
涙など
船は流さない
かわりに僕がひとりで泣いていた
その岸辺で
一緒に泣いてくれた
あなたが
ただしい恋人でよかった
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