宇宙のカツカレー/サトタロ
 
太鼓持ちの男が
夜の盛り場へと飛び出した
理想の相棒・太鼓打ちを探すために
正装の褌姿で

「俺の太鼓を叩いてみな」
道行く人間にのべつ幕なし声をかけたが
そこそこ響かせる者はいても
太鼓持ちの魂にまでは届かなかった
失禁するほどではなかった

「腐った世の中だ」
落胆した太鼓持ちが
立ち飲み屋でコップ酒の中に吐き捨てた
理想の太鼓打ちは見つからないのか
そこに現れた一人の男
ブリーフを人差し指で回しながら
太鼓持ちに伝えた
「本物の太鼓打ちなら
むこうのサーキットにいるぜ!」

サーキットのピットの奥に
果たして本物がいた
バチを持って待っていた
はちみつと小麦粉まみれで待っていた

理想の相棒だった
野薔薇が咲いた
太鼓持ちは
すぐさまレースクィーンへと転職した
手にはカツカレーを持った
宇宙のカツカレーを
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