暴力と責任、若しくは<善悪の彼岸>−「存在の彼方へ」を読んでみる11/もぐもぐ
 
り、その初子を殺される(初子=未来とでも読めば、未来を悉く断たれる)。殺される側からいえば、何らの理由もなく、殺される。全くの不条理な出来事である。そしてそれだけに余計、圧倒的な威力である。

一応、これ以前に神や預言者が何度もエジプト王に警告を送り、その警告の度に一旦は王は出エジプトの約束をするわけだが、結局はいつも守らないので、最終的な強硬手段としてこうした措置が取られたような形にはなっている。このような予告は、上のような不条理な威力を幾分緩和する。警告を与え、それに従うか従わないかの選択の余地を与えた時点で、既に神は一定範囲で合理的に対応可能な(予測可能な)存在になっている。「契約」(旧
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