カミナリグモ/中谷 カイネ
大学の授業を抜け出して
立ち入り禁止の看板を飛び越えて
僕は屋上に登る。
豪雨の中
見つめる先は
カミナリグモ
黒雲の中を
光の筋がいくつも走り回る。
キレイだ
額に張り付く前髪や
朝の大事な20分をかけて
ドライヤーとワックスでセットした髪が
雨に濡れて
ぺっちゃんこになっても
気にならなかった。
中学生のとき
掃除の時間
非常階段から見た
黒雲の中の閃光
それを見たとき、僕ははじめて体の中に閃光が流れるのを感じた。
「キレイだ」
つぶやいてみる
しかし
弱々しい声は激しい雨にかきけされて消えた。
「キレイだ!!」
叫んで、後ろに倒れこみ
空を見る。
漆黒から光の粒が落ちてくる
今日、僕は人生で2回目の光を浴びた。
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