友達/小川 葉
今日友達がね、と
父さんに話しかけると
父さんの背中が
スローモーションみたいに揺れていた
揺れているだけで
振り向きたいのに振り向けない
奇妙な動きをし続けていた
ビデオが壊れたような
ネットのストリーミングのコマが抜けたような
動きよりもっと早く
母さんは顔を上げてはうつむく動作を
幾度となく繰り返していた
僕はそんなふたりを見ながら
友達という言葉の意味を考えていた
意味など必要ないのに
考えなければならなかった
その意味が
少年にはまだわからなかった
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