とんぼ達と/砂木
んで とんぼをだして
近くの安全そうな草むらに落とした
とんぼは抵抗したけれど動けないので
落ちた場所でぐったりしていた
あとは知らないよ
それっきり忘れて
りんごもぎに集中した
そして陽も射し暖かくなった頃
畑の中で休憩をとった
お茶を飲みつつぼーっと青い空をみていたら
しっぽにつかまって 一組になっていたとんぼが
ふらふらと飛んで来て
私の眼の前でぴたりと止まった
お互いを認識してみつめあったのは
一瞬のようだった気がする
助けたとんぼの夫婦かどうか
確かめるすべもない けれど多分
あの細い手足で何度も助けようとしていた
あんなに悲痛な羽音は 悲鳴はきいた事がなく
私が去ったあとに かけつけたあのとんぼは
きっと つがいを助けるために
全力で暖めたのだろう
敵かも知れない私に わざわざ姿をみせたのだろう
なんて思ってしまって
毎年 終わっていく者が季節と共に過ぎる事に
少しづつなれてきたけれど
忘れられない熱さは 過ぎ去る事はない
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