薔薇夢跡/まどろむ海月
 
らくたどって
やがて私は
内側に開く



薔薇の嵐が吹き荒れて
深紅の花びらが
狂おしいほど
降りそそいだ
あの頃のままに
その部屋はある



私を薔薇中毒にした
貴女が去り
ながい禁断症状から
立ち上がって
封印した部屋



整理もつかぬまま
厚く散り積もった
深紅の花弁に乱されて
強い馨りの愛しさは
今も私を苦しませるんだね




背中で扉を閉める
 まぶたの裏に浮かぶ
 球面の文字盤には
 蜘蛛の巣のように
 取り戻せぬ距離と
 時の轍が示されている





部屋は再び封印された
 私よ
 私よ
 多忙な日常の旅へ
 帰ろう
 帰ろうよ













            

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