小説家/
ふるる
秋晴れの空に向かって窓が開いている。本棚ばかり大きい部屋には姉と妹。
妹は死んだ小説家の本を取り出しては「これは手」「これは肺」「これはくるぶし」と姉に教える。小説家は自らの身体と臓器をそっくり文字にし終えたので死んだのだと言う。
「じゃあこれ燃したらどう。」姉は意地悪く言った。
「そしたら」妹はぱっきりと青い秋空を見上げ、頬を染めた。
「そしたらあの人は、お空の雲になる。鳥になる。星になる。」
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