天秤/いっと
物心ついた頃には右手に天秤を握りしめていた
天秤の上にものを置くと
新しい道が生まれた
誤差は常につきまとったが
時を重ねるほどに精度は向上し
それに伴うように、皿の大きさも
おおきくなっていく
名前を持たないものも
目には見えないものも
皿には置くことができた
どんなものを置いても
天秤は、ひとまずの決定を下す
だがついに、天秤は異常をきたした
常に左側に、傾いてしまうのだ
どんなに重いものを
どんなに大きなものを
どんなに素晴らしいものを
どんなに美しいものを
右側の皿に置いてみても
常に左側に傾く天秤
よく見てみると、左側の皿に何かが置いてあった
あなたはその置かれたものに、名前を付けることができる
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