白いノートには何も書けなかった/健
適当なメロディを口ずさむ
何もない 白の午後
どこへでも行けるから どこへも行かない
円を描くように
歩いて ただ 空を見上げる
少し休んでみてもいいと言われて 休んだ
そろそろ歩いた方がいいと言われて 歩いた
風景は止まらない
走り抜ける夜と 暮れていく朝
靴底が焦げるような匂い
重なって響く 誰かの群れの足音
使い古した教科書に書き加えた 意味のない落書き
何も見たくなかった時
いつの間にか視線は上へ上へと逃げて行った
それを
いつだって空を見ていた
と呼んで
あの時のこの目は
何から休み 何を見ようとしていたんだろう
思い出したように吹く風。
動こうとしない雲、
飛ばされる雲、
すっと消えてしまう雲。
何もない白の午後
ずっと この空を見つめていたかった
あの落書きのメロディを
ただ 適当に 口ずさみながら
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