近影/笹子ゆら
ああ、そうであったと
気付いたのは多分もっと前で
どうしてだかいつの間にかに
あの人の優しげな微笑を
自分のだけにしてしまいたいと
思ってしまっている
嫉妬なんて馬鹿げていると
理解していたはずだったのに
わたしの脳は機能を忘れてしまったようで
今更、わからなくなってしまった
流行りのJ-POPの文句みたいな恋愛は
別にほしくはなかったのに
共感を求めたいわけでもないのに
同じ気持ちを歌った歌は
いくらでも存在してしまっているから、
あの人は誰にでもやさしいので
わたしにだけではないので
それがとてつもなく淋しい
そんな、ことを
こんな気持ちを誰にも言えず
誰かの彼氏が欲しいという声に同調し
他愛もない話に花を咲かせて
いる
でも、本当は
あの人の心が欲しいだなんて
下らないことが頭に浮かんできてしまうから
そういう青臭い自分が、恥ずかしくてたまらない、
たまらないのだ
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