祖母の見舞い /服部 剛
 
「この病室は、眺めがいいねぇ・・・」 
ガラス越し
輝く太陽の下に広がる 
パノラマの海 
ベッドの上で点滴に繋がれて 
胸の痛みに悶えながら 
なんとか作り笑いをする祖母をよそに 
目の前の海はあまりに
穏やかな凪ぎで 
滑らかな波のまにまに 
無数の光の宝石は踊る 
ベッド脇の椅子に腰かけた僕は 
しばらく握っていた祖母の手を離し 
床に置いたリュックから取り出した 
詩集の原稿を手に 
たった一人の為の朗読会を始めた 
「 
  あなたは今 
  無人の映画館にいます 
  やがてスクリーンに映る 
  詩の物語は始まり 
 
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)