太鼓橋の補記/m.qyi
 
太鼓橋


桂大橋を渡っていくと袂で別れた嘉之さんがたっている。あれ、なぜ来た方に再た引っ返してきたものか、馬鹿だな。嘉之さんにお辞儀してもう一度手を振る。笑って手を振ってくれる。ああ嘉之さんさようなら、また訪るから。ぼくは、回れ右をして別れをつげた、振り返ると嘉之さんはまだ手を振っている。この白木の橋はいつの時代のものかはしれないこんな大きな太鼓橋だ。橋の中央の向こう岸がみえるところまで進んでいくと、案の定、嘉之さんが橋の袂に立ってぼくを迎えてくれる笑顔が見えた。

大正十七年七月二十三日岸田良平記

記日についてのご指摘を受けたが、お化けの噺だけにそんな場所も時間も存在しないのである。

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