林檎の皮と赤い風船/百瀬朝子
 
さは生き物のものとは違ってて
呼吸もなく
腕に巻きついた蛇はそのまま首をつたい目隠し
これ以上、あたしの低い体温を奪わないで欲しいのに
尾はあたしの口元を覆って
呼吸まで奪おうと一生懸命
窒息する苦しみにいつかの記憶が重なって

あれは心が溺れて居場所のなかった昔のあたし
苦しみは共通して窒息へといざなう
見上げれば不思議
まぶたの裏にはいつだって
赤い風船が見えるんだ
あたしの心の太陽よ、どうか
弾けて消えたりしないでよ

ほどけて落ちた林檎の皮
温度はなくて
蛇の抜け殻
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