day dream/月音
 


ひとつのファンタジーがある

それは 
ファミレスのチェリーパイに象徴される
1990年代の遺残だ

アルケー と 唱えて
僕は 学生時代の夢を見る

世の中の仕組みなんて
てんで気付かないふりをしながら

ワンルームのアパートの床に
放り出された現象学のかけら

電話ボックスの中で 座り込んだ夜
もはやそれは幻覚に近い

薄明かりの中で 手を伸ばした夜
それはもはや妄想に近い

体に触れていたはずなのに
思い出すこともできない

断片化された記憶は
圧倒的にピースが足りない

繋ぎ合わせたモザイクは
いびつな彫像のようだ

いったい誰が 僕の本当の名を 呼ぶのだ

夢から覚める刹那
無機質な声が尋ねる

サルトルには 
もう 
追いついたかい



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