染めない色/朔 水
みつめる瞳とみかえす瞳。
抑圧の困惑と放出の誘惑。
装った平静と剥き出しの波動。
刹那。
破られた膜と放たれた粒子。
金色の刃には転がる赤を添えて。
銀色の杯には流れる青を酌み交して。
そんな僕らの背中には、愛の色をした翼がなくて。
それでも僕らは求めあって。
真っ黒なようで透明な、このガラスの翼で
互いを、自分を、ぎゅ、と抱きしめようとして。
やっぱりパリンと、割れてしまって。
寒くて、凍えて、救いを求めて。
みかえす瞳がみつめる瞳。
それはグロテスクなまでの必要性という交錯。
「無理なら騙して。」
それは悲しいくらい罪のない涙色で。
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