記憶の海/浅井実花
足跡を探しては
途方に暮れた
痕跡すら残さずに
記憶だけ残して
君は行ってしまった
過去に還ろうとして
流すのが涙なら
それは記憶の海の
ほんの僅かな部分
君がいて、私がいて
また笑い合えると
そんな日がくると
そう信じる糸もなく
あとどれくらい
涙を零せば
歩き出せるのだろう
あとどのくらい
悲しめば
歩き出せるのだろう
君の中から
私が消えたように
私の中からも
君が消えるのだろうか
そこにすぐ行けるなら
そこにすぐ行けるなら
こんな所で涙など
流しはしないというのに
記憶の海へと還ろう
それが決断なのだとしたら
寂しいけれど
救いの手も払いのけて
記憶の海へと還ろう
君と共に在ろう
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