約束/小川 葉
 
 
約束をした
もうひとりのあなたと
あなたには
内緒で

約束のことを知らない
あなたは
なぜかいつもより
やさしかった
気がした

ひとを裏切ることが
ひとをやさしくしてしまう
ことがあった

約束は
まもらなかった
約束のことを知らないまま
あなたはいつもの
ひとりだけの
あなたになっていた

もうひとりのあなたの
涙が頬を
音もなくながれていった
遠いどこかで
待つことをあきらめた
そのことを
知らせるように
 
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