「 潜入創作官。P. 」/PULL.
 






 うそばなしが側にいる時はうそばなしについて書いてはいいが創作してはいけない。相手はあのうそばなしである、どんな嘘を吐かれているか解らない、潜入創作官たるものくれぐれも用心して事に当たらなければならない、だがそれをうそばなしの前で顔に出してはいけない、うそばなしはその嘘の重みの分だけ用心深い、物陰で表情を隠しかりそめの仮面を被り、まるで年来の友であるかのように馴れ馴れしく肩を組み(この隙にうそばなしの肩に付いていた髪の毛を採取し)生まれや育ち、それに家族恋人友人愛人家庭のことなどを、うそばなしの調子に合わせどんどん話させる、例えどんなに嘘臭い荒唐無稽な話であってもと
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