心臓/士狼(銀)
{引用=悲しみを知らない人などきっといません、
同じような顔で同じような服を着て、
量産型が街を歩いているよ、
ねぇ、
おかしいね、
おかしいね、
同じでなければ怖いんだ、
臆病だね、
と鳩たちが笑っているというのに、
知らないふりをして、
忘れたふりをして、
仮面の分厚くなった人たちが、
鏡を前にするとき、
ひび割れた隙間から、
歪んだ自身を見つけたとき、
悲しみは、
いったい何処へゆけばよかったのでしょう、
心臓へ戻ってきた血液の中に、
僅かに忍ばせた全身の悲しみは、
いったい何処へゆけばよかったのでしょう、
かなしみを亡くした彼女は、
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