針になる/ゆるこ
 
 
思考でパッチワークをしても
なにも暗躍しない
鉛色の空は重く、冷たく
影法師を縫い付けては、体温を奪う
 
視力が落ちた日の朝
妹は聴力を失い
お母さんは足を失った
お父さんは肝臓と命を失った
 
 
還元は夢の中で
掻き分けながらダイブしては
変拍子の町中に、
       溶ける
 
降水確率と同じくらいに
ひとり。
 
 
・
 
 
田舎のじいじとばあばは
いつだってお金をくれます
一緒にいてあげられないからって
口を金魚みたいにさせながらいいます
 
そのたびにわたしは
しわしわの手のひらを
選挙に出馬した人みたいにぎゅっと握り
にっこりと笑うのです
 
 
(嘘みたいに、ひとり。)
 
 
 
・
 
 
 
こめかみに鈍い痛みが走れば
救われるのか
コンビニのおにぎりを頬張りながら
暖かい部屋で考える
 
きっとそれは、砂糖菓子みたいに甘い
わたしはひとり
針に
なりたいだけなのに。
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