生物のため息/ばんざわ くにお
 
冬枯れの道を
男は歩いていた
街路樹はすっかり葉をおとし
青々と葉を茂らせていた頃の
面影もない

かつて若かった頃
男の夢と希望に
生きがいを見つけ
子供の成長を喜んだ
そんな自分を
神様はほめてくれた

街はずれで
今は珍しいこじきに
あった
こじきも昔は
夢を持っていたが
夢はかなわなかった

男は昨夜バーで飲んだ
店の女との会話を
思い出していた
とがったくちびるで
女は言った
あたしにはどれもこれも
同じことなのよ

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