夜を歩く/オイタル
たのだが
(死んだものに近況があるのか、ないのか)
やがて
彼が死んだことも忘れていた。
時折こちらを見ながら
男たちは長く話し込んでいた。
明かりの下に
虫たちは雪のように群がった。
名残は惜しかったが
いかなければならない。
彼らと別れて
バックネット裏の道を通って
グランドを離れた。
一塁側のベンチから
笑い声が上がる。
両脇で
背の高い草がゆれる。
右手でとがった葉先を千切り
二、三度振って夜へ捨てた。
空の高いところ
渦巻く闇の岸辺を
沖のほうへ
強い風が吹いた。
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