夜を歩く/オイタル
胸まである雑草を分けて歩いた。
蒸し暑い夜だった。
夜だったが妙に明るい。
藪を抜けて
野球場に出た。
グランドに白い照明があたっている。
白いシャツの男達が集まっている。
新しい野球チームを作るらしい。
死んだはずの男が混じっていた。
ずいぶん世話にもなったのに
不義理を重ねた人だった。
やあこれはと元気そうだった。
大きな目で
黒い額で
縮れた髪で
歯の抜けた口を手で隠して
ぎょろりと笑っていた。
「あなたは確か死んだはずだが。」
というのもはばかられて
「晩年は苦労もしたそうだが。」
とはいよいよ言えなくて
久しぶりの近況などつきまぜて笑ってもいたの
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