指定席/小川 葉
僕らは
指定席とよばれる
ひとりずつ与えられた席にすわって
ときには時速三百キロメートルを超える
レースドライバーのように
ふと孤独の恐怖に気づいたかと思えば
またすぐに慣れてしまって
新幹線の指定席から
車窓をながめてる
過ぎてゆく
街の景色で暮らす
ひとたちはひとの数だけ
あたえられた命の指定席で眠り
ときにははたらき
ときには笑い
ときには傷つき
そして泣いてしまう
こともある
指定席から指定席へ
バトンのように届けられる
愛もある
なんでもある
指定席は指定されてるから
選ぶことはできないし
拒むこともできなかった
わたしたちはいつか
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