女/
浅井実花
私は海を見ていた
海は生命の母という
私はその美しさに目が眩み
気がつけば
海の中にどんどん入っていった
一面の海に私が満たされていく
海は母
私は胎児
羊水の中、手足を動かして
今、私は海になろうとしている
身の丈は水で覆われ
呼吸は出来ずとも苦しくはなく
今一体になろうとしている
私は思いを馳せた
生命の母とはどんな気分か
そうして私はとうとう海になった
それが生命を失うことだと知らず
小さな海と命を失った女の物語
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