good-by/氷魚
 
眼を閉じた
ボクの胸に
其れはポツリと灯る

肋骨の梯子ノボレ
海に還るものがたり 

君の優しい相槌に
あやされて動いてた
心臓が在る

目蓋に澱む涙
引いては満ちる
潮の音がする

横たわり
泣き叫ぶだけだった赤子が
何時の日か
友情と嫉妬
生き甲斐を覚えた
信じられるものは
まだそれほど多くないけれど

「有難う」

キミは
今ゆっくりと
その足を持ち上げる
泳ぎだす

空気を
細く絞られた
気管に詰め込む
足りない、足りない

骨を
関節を
腕のすべてを
其処に突き出して

両脚
指の間に
薄い膜を被せて
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