あなたは何故一番甘えた声で然様なら、と言ったの?/哀詩
 


名前を呼んでは返事するきみに
「よんでみただけだよ。」と伏せたひとみでわらうと
きみはいつだって「なんだよ、」としょうがない笑顔で聞くから
それがすきなわたしはいつだってあなたの名前を呼んだ。
あなたの声を聞くために、あなたがわたしにわらうように。


前髪越しのあなたの顔がひかりにきらめいて直視できないから
こっちをみてすきだよと言うきみに
わたしはいつだってあなたの履き古した革靴の縫込みをみて、
「ばかじゃないの?」とあがる口角をさげた。


あなたが旅立ったあの日は近くって、
にぎったあなたの左手の親指の
嘘くさい約束に永遠を棄てて
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