鳥たちの雨/小川 葉
 
 
つめたく湿った朝
目がさめると
屋根から鳥の足音が聞こえる

降り立って
昨夜の戦況を
せわしなく伝えていた
兵士の声は力尽き
衛生兵の途方に暮れた
足音が聞こえる

数匹のみみずを奪いあう
激しい羽音にまじり
声にならない息遣いも
聞こえてる

それは毎朝のこと
空の上では今も
終わらない戦争が続いてる

雨が降る
とても冷たい雨音が
鳥たちの足音と
声にならない息遣いの
すべてを消し去ってしまう

人は窓を閉めながら
遠い空に鳥を見る
窓から見えない戦場に
飛び立ってゆく
彼らのきずついたその背中を
 
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