Bad-s-tripper-King/影山影司
 
 断続的な悲鳴が聴こえる。搾り出された声は、だんだん絞りカスみたいな声になっていく。街全てに走り出した悲鳴が、がらんどうのビルやスーパーマーケットを反響して増幅される様を考える。
 少しだけ愉快になった。

 バッドトリッパー達がカプセルによって、自らの脳味噌をひたひたの満タンにするように、かの悲鳴は街を満たしている。
 この世界もまたバッドトリッパーの脳味噌の中なのかもしれない。穴ボコだらけのスカスカだ。ネズミ捕りに仕掛けられた煎餅はまだ生きているだろうか。宇宙が膨張しているという自説を固持した十代の頃を想起したが、トリケラトプスの大きさすら凌ぐゴリラ達の遊泳は危険だと思う。
 少しだけ愉快だが、その本質はずっと不愉快だ。
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